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主人公のコギャルたち(出典:「SUNNY 強い気持ち・強い愛」公式Instagram

1990年代半ばの女子高生(コギャル)たちを主人公にした映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』を公開初日に観てきた。上映されることを知って以来、ずっと待ち望んでいた作品だった。鑑賞から数日経つが、今なお余韻にどっぷりと浸っていて、抜け出せないままだ。上映中に何度も笑い、声を押し殺して何度も泣いた。それほど感情を揺さぶられた映画だった。

この作品は韓国の大人気映画「サニー 永遠の仲間たち」のリメイク版(とはいえ、時代設定などはまるで違う)で、監督は「モテキ」などを手掛けた大根仁氏。そして、音楽監修は小室哲哉先生。劇中でも彼がプロデュースした安室奈美恵やhitomiの楽曲が印象的に流れる。

公式プログラム本の記述によると、主人公たちの設定は95〜97年ごろに高校時代を過ごしたことになっている。まさに私の高校時代と丸かぶりだ。しかも大根監督のインタビューによると、90年代の聖地・渋谷ではなく横浜あたりの高校生の生活をイメージしたという。当時の遊び場といえば町田で、高3の夏に横浜駅前の塾に夏期講習で通っていた私にとって、映画の空気感はますます原体験と重なる。

ただ、ここで注釈を入れるとすれば、私はコギャルではなかったし(男性だから)、毎日遊び歩いていたタイプでもなかった。むしろ映画の主人公たちとは対極で、高校時代の約3分の1は受験勉強を熱心にしていたのではないだろうか。ときには友達とカラオケに行ったり、野球やサッカーしたり、泊まりに行って徹夜でゲームしたりということはあったが、いたって健全だ(振り返ってみて、本当に健全すぎて衝撃を受けている)。強いていえば、当時は生粋のハードロック狂いだったので、町田の中古CD屋に入り浸ったり、BON JOVIやMR.BIGなどのライブに足を運ぶことはしていた。けど、お金があるわけでもないので、まあ大したことではない。

つらつらと書いたが、何が言いたかったのかというと、私のように当時「非リア充」の高校生でも、この映画は十分すぎるほど共感し、ノスタルジーを感じることができるということだ。

その理由は明確で、当時の高校生の文化は「画一化」されていたから。まだインターネットもなく、主要な情報源といえば、テレビ、雑誌、ラジオくらいだった。なので、派手なコギャルだろうが、普通の男子学生だろうが、だいたい同じカルチャー体験をしていた。TKファミリーのヒット曲は皆知っていたし、主要なTVドラマやバラエティ番組(例えば「ロンバケ」や「生ダラ」など)は誰もが一通り押さえていた。広告の力も絶大で、「C.C.レモン」や「桃の天然水」が爆発的に流行り、一時期は皆がそればかり飲んでいたこともあった(笑)。言い換えれば、それほど情報格差がなかったように思える(とはいえ、私は神奈川の私立高校に通っていたので、地方出身者には異論があるかもしれない)。

作品の中で、大勢のコギャルたちが履いているルーズソックスがずらりと映る象徴的なシーンがあるが、これもごく当たり前の日常光景だったのだ。コギャルだろうが、地味な女子高生だろうが、全員がルーズソックスを履いていた。映画の中の脚色でも何でもない。映画を観た若い世代の人たちは、驚いたり、あるいは滑稽に思ったりするかもしれないが、この画一化が90年代半ばごろの高校生のカルチャーだった。個性とかそうした議論よりも、トレンドに乗りたいという気持ちが皆強かった。そんな気がしている。

ちなみに、うちの高校はルーズソックスが禁止だったが、学校を後にすると、女子生徒たちは皆、最寄りの駅のトイレや、電車の中で速攻ルーズソックスに履き替えていたのを思い出される。

あの時代をともに経験した同世代の人たちには、是が非でも観てもらいたい映画である。私自身、ここまで不特定多数の人に勧めたいと思う映画は生まれて初めてのことだ。ついでに言うと、劇場でプログラムと関連グッズを買ったのも初である。

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クリアファイルセット(左)と公式プログラム本